AI翻訳の精度は日々進歩していますが、改良する点はまだあります。セブITアウトソーシングセンターでも実験的に使用していますが、AI翻訳にはいくつかの苦手分野があります。Google翻訳を例にあげてみます。
社内のアウトソーシング・プロジェクトを進めている中で、ある作業員から、「指示内容はある程度理解できるのですが、最後の文章が理解できません。これはどういう意味でしょうか。」と質問されました。
この文章で「もの」というあいまいな表現を使用したため、上手く翻訳がいきませんでした。「もの」という表現を自動翻訳に考えさせることや、分かりにくい表現だと余計な文章を作ってしまう傾向にあるようです。
あいまいな表現を避けシンプルな文章にしてみました。こちらの方が、ぎこちない文章ですがスッキリとします。「画像のままで良い」を「画像で良い」というように、意味をはっきりさせると上手く翻訳されます。
ご存知の通り、日本語には敬語、尊敬語や丁寧語などがありますが、これらの表現方法が上手く翻訳できない場合が多いです。その場合は日本語の言いまわしを変えて入力する必要があります。英語と日本語のGoogle翻訳の結果を例にとって説明します。
例1
佐藤さんは退職しました。
Sato retired.
【説明】
定年退職など、年齢により退職したのであれば正解となりますが、そうではない場合は「retire」は適切ではなくなります。「佐藤さんは辞めました」とシンプルに文章を変えれば「Sato quit」になり文章としてどちらでも使えるようになります。
例2
プログラムの制御は検討要かもしれません。
Program control may be a consideration.
【説明】
わかりにくい文章に翻訳されます。「プログラムの制御をあなたは検討する必要があると思います」とすれば、「I think you should consider controlling the program」と誰に対して言っているか明確になります。必要な言葉(主語、目的語の簡略は避けた方がいいです。)
例3
爽やかな後味、東京飲料!
Refreshing aftertaste, Tokyo drink!
【説明】
さすがにキャッチフレーズは翻訳できないようです。キャッチフレーズは言葉の知識と、時には文法をわざと一般的ではない使い方に変えたりするので、日本語を英語に変更はできません。翻訳できる人に依頼した方がいいでしょう。
例4
I'm dropping off.
私は降りる
【説明】
口語の表現には対応していないです。「うとうとする」と言う意味で使いましたが、別の意味に書き換えられます。
例5
What brings you here?
何がここにあなたをもたらしますか?
【説明】
使役動詞は翻訳が難しいようです。「どうしてここに来たの?」が正しい意味です。
AI翻訳はAI翻訳と言われる事もある通り、ディープラーニング(深層学習)といった人工知能の技術がフルに使われています。機械学習のアルゴリズムにより、単語の意味だけでなく接続詞の意味や、単語の位置なども分析し、自然な文章を翻訳できるようになりましたが、まだまだ参考データが足りません。人により表現方法は様々であり、それらに合わせて翻訳するのは現状では難しいようです。
特に日本語特有の主語、目的語の省略はAI翻訳では対応できません。「あれ取って」や「それ」、「これ」など対象が多ければ多いほど、どれについて言及しているか分かりません。文章には30%の情報しか詰まっておらず、ほとんど目で情報を得ているのが現実です。AI翻訳では、文章を作成する上で曖昧な表現をしてしまうと、前後関係やその場の状態を視覚で確認できないため、足りない情報を補なうことが難しいのです。したがって、AI翻訳はよく「コンテキスト(コンテクスト)が理解できない」と称されます。
Google翻訳などのAI翻訳は、違う言語に翻訳するための便利なツールですが、皮肉な事にユーザーの日本語の文章力が試されます。この機会に自分の指示が分かりやすく、的確なのか、といったことを見直そうと思います。
ライター:Kondo
御相談、ご質問はこちら |
サービスご案内資料や、特別資料「神は細部に宿る~アノテーションを駆使したAIシステムの精度向上」がダウンロードできます。 |
最新事例の公開情報や、イベント・セミナー情報をお届けします。 |