パイロットプロジェクトのメンバーが不在となる中、プロジェクトメンバーを再度どのようにしてアサインすべきか?という話し合いが現地ベンダーと行われていました。そのような中、常に工事現場のような、空が見えない上海に渡航するたび、どんどん街が発展し、それとともに物価もどんどん上昇しつつありました。
社会主義的資本主義の猛烈な経済発展の勢いを目の当たりにし、物価の上昇スピードは想像以上で、これはいずれ工場(生産拠点)としては原価の面でたちゆかなくなるのでは?つまり、開発やBPO・ITアウトソーシング拠点として本当に上海で良いのか?という考えが生まれつつありました。そのような中、決定的なリスクが顕在化しました、それは「カントリーリスク」です。
中国における反日感情は強く、貧しい地方において中央政府への反感が反日にすりかえられるような動きもあり、地方都市で散発的にデモなどが発生していたようですが、徐々にもりあがりを見せ、ついに大都市である上海でも2005年4月16日(土)、デモが発生し一部が暴徒化しました。ただし当時は大使館に投げられたものが卵や果物などが中心であり、危険なものでもレンガの破片ぐらいだったようです。
我々には直接的な被害はなかったものの、政権に対する不満の蓄積、目をそらすための対日感情のあおりはあらためて強く感じました。数年後、デモが暴徒化して日経店舗が焼き討ちなどにあいましたが、早晩そのような事態になる、ということは予想できました。
物価上昇を避ける、という事だけを考えると、内陸部の企業に依頼しなおす、という選択肢もありますが、内陸部にどんどん逃げても物価上昇は急速に後を追いかけることは目に見えていましたし、なによりカントリーリスクは企業努力で解決するのは困難です。したがって、中国からは完全撤収を決め、かつ今後ビジネス的に中国には当面触れないという判断を行いました。生産拠点としてだけではなく、市場としても、です。
近年はアリババを始め中国のIT産業が急速に発展しており、日本を凌ぐ勢いで伸びている事実を見れば、優秀なエンジニアが大量に存在し、マネジメントされれば大きな効果が出せる事は証明されています。また、大連を中心に、様々なBPO・ITアウトソーシングのプロジェクトが進んでいます。しかし、それらの開発プロジェクトやBPO・ITアウトソーシングサービスは、中国人によりマネジメントが行われているはずです。現在は状況が変わっているかもしれませんが、少なくとも日本人によるマネジメントは想像以上に困難なのではないか、と想像しています。
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