国立大学法人T大学では、人間の動きを可視化して解析するモーションキャプチャの研究にAIを活用したシステムを活用している。AIが必要とする学習データは、人の画像に対して決められた箇所に点を付与する「キーポイント」と呼ばれるアノテーション済のデータセットとなるが、見えない箇所へのキーポイント付与が求められるため、難易度が高いアノテーションの部類になる。実施ツールは「COCO Annotator」という指定があったが、アノテーション作業の経験が豊富である、自社オフショア拠点でキーポイント作業をリーズナブルに実施した。
ITアウトソーシング事例
アノテーション事例~人の画像に対するキーポイント付与
国立大学法人T大学
国立大学法人T大学では、人間の動きを可視化して解析する、モーションキャプチャの研究を行っている。この技術は、アスリートの動きを可視化する用途などに利用されているが、従来はセンサーを数十個以上体に取り付けた上で、特殊なカメラを10台以上使って撮影する必要があるため、準備だけでも数時間かかってしまう状況であった。
そこでT大学では、2次元映像上でAIによって関節の中心位置を服装の上から推定したのち、独自のアルゴリズムを用いて骨格の運動を3次元再構成し、従来のモーションキャプチャに近い精度で動きを再現する技術を開発した。この新たな技術では、「キーポイント」と呼ばれるアノテーションを行ったデータセットを学習データとして活用したAIによって解析を行うため、大量の画像データに対してアノテーション作業を行うことが必要となっていた。
今回のアノテーション作業は、運動中の人間に対して実施するものである。具体的には、体操やバレーボールなど、スポーツを行っている人の画像に対して決められた箇所にキーポイントを付与する、「キーポイント」と呼ばれるアノテーション作業となる。キーポイントを付与する作業は、目や耳、肘といった人間の部位に対して点を付与する作業となるが、大半の画像データセットでは、撮影した角度によって右目は写っているが左目は見えない、といったように、キーポイントを付与したい特徴点の場所が全て見えない画像が大半となる。したがって、画像アノテーションの中でも「バウンディングボックス」や「セグメンテーション」などと比較した場合、見えない部分のポイントを類推しながら、かつ正確にキーポイントを付与する必要があるため、アノテーターには類推する能力をはじめとする経験値が求められる。また、対象となる画像の枚数は多いため、アノテーション作業におけるキーポイント付与スピードも同時に求められる。
さらに、今回は納品データの形式が決まっており、対応したアノテーションツールとなる「COCO Annotator」を利用する必要があるため、指定されたツールの構築をはじめ、「COCO Annotator」を扱える環境を複数有していること、および高い精度でキーポイント付与を実施することが可能となる人員数がある程度確保できることも課題として挙げられた。
上記課題を踏まえて業者選定を行う中で、豊富なアノテーション作業経験を有し、海外拠点で実施するためリーズナブルなアノテーション作業が期待できそうなサイバーテックに見積を依頼することにした。見積依頼内容は、費用とともに数枚のサンプル提出を依頼するという流れで業者の選定が行われた。T大学ではサイバーテックを含め4社に見積依頼を行ったが、それぞれの企業から提示された費用およびサンプルなどの提案を検討した結果、サイバーテックがアウトソーシング先として選定された。決め手となったポイントは以下の通り。
アノテーション作業は延べ10,000名の人物が写っている画像データセットに対して、当初は一括で行う予定であったが、途中で数回に分けて検証しながら教師データをAIシステムに学習させるというモデル検証を実施する必要が出てきたため、それぞれの競技種目において3回に分けて実施することとなった。対象となる画像データセットの種目は、サッカー、体操、テコンドーおよびバレーボールの画像データセットである。
初回のキーポイント付与作業は、サッカー、体操、テコンドーをプレイ中の人物画像データセットに対して指定された34か所にキーポイントを付与する作業を行った。また、対象となる人物画像に対してバウンディングボックスで囲む作業も合わせて実施した。課題として挙げられていた、画像に写っていない特徴点に対するキーポイント付与についても、セブITアウトソーシングセンターの現地日本人ディレクターとフィリピン人アノテーションマネージャ―による指摘を反映させながら問題なく作業を進めることができ、納期通りに納品することができた。
2回目のキーポイント付与作業は、1回目でアノテーション作業を実施したデータセットをAIシステムに学習させてみた結果を受けて、若干の仕様変更が加えられた。2回目のアノテーション作業対象となる画像データセットの種目はサッカーの追加分とバレーボールの一部となり、キーポイント付与作業を実施した。アノテーション仕様の変更があった部分に関しても、アノテーション手順書を改訂した上で、特に問題なく作業は進められた。3回目のアノテーション作業対象となる画像データセットの種目はバレーボールが指定され、予定通りの納期でキーポイント付与作業を実施し、納品まで完了した。
今回のキーポイント付与によるアノテーション作業により、AIシステムが必要とする一通りのデータセットが揃ったため、更にAI活用を推進したモーションキャプチャの研究を進めていく予定である。研究を進める中で今後種目数を増やしていくことを検討しており、その際には求めるキーポイント付与作業の仕様を熟知し、アノテーションの仕様をはじめ、作業スケジュールなどの要望に対しても柔軟に対応頂けるサイバーテック セブITアウトソーシングセンターに今後の作業もお願いしたい、という話を頂いている。
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