税務研究会様
税務や会計に関する専門情報の提供を行っている税務研究会。紙媒体で提供している定期刊行物の発行の他、ネット事業にも注力している。ネット事業の拡大に伴うコンテンツデータの整理と統合化の必要性を感じた同社では、XMLデータベース「NeoCore」を導入。多様化するサービスに対し、素早く対応できる柔軟なシステムの構築に成功した。
定期刊行物向けコンテンツ管理システム
株式会社税務研究会
ネット関連事業の拡大と利用者の利便性向上を目指し、XMLデータベースでコンテンツの統合・一元化を実現。
背景
株式会社税務研究会(以下税務研究会)は1947年4月、「納税者と税務当局との架け橋」となることを目的として創設され、税務、会計等の実務情報サービスとして、定期刊行物、書籍の発刊、電子メディアの制作と販売、Web上でのデータベースサービスなど様々な出版サービスを展開している。
同社の代表的な出版物である週刊「税務通信」、週刊「経営財務」は、税務・会計に関する定期刊行物である。特に週刊「税務通信」は、この分野の草分け的な出版物で長い歴史を持ち、大手企業の経理・財務部門や税理士・会計士事務所の実務担当者の実に7~8割が購読しているという。
また、Webを利用したデータベースも展開しており、読者・会員向けには、週刊「税務通信」や週刊「経営財務」の過去記事検索や税務・会計関連の法令データの閲覧サービスを提供している。税務専門誌としてのデータベースサービスを開始したのは、同社が国内で初めてである。
税務研究会が、週刊「税務通信」の記事データをデータベース化し始めたのは、約十数年前にさかのぼる。データベース化に着手したきっかけは、「出版物の増加に伴う保管スペースの問題と、データを二次利用したサービスの構想があり、その方針を受けた制作部では、当時標準化されていたSGML形式でデータベース化を進めました。」(税務研究会 執行役員 編集制作 本部長 柳沢 保 氏)
この当時について、税務研究会の柳沢氏は、次のように振り返る。
「この決定の裏には、当社社長も含めた経営陣の強い熱意がありました。このプロジェクトを進めるにあたり、海外への視察も行いました。当時日本は、インターネットの通信費が高く、Webでの利用がすぐにビジネスになるとは考えていませんでしたが、来るべき将来のために、再利用しやすいSGML形式でデータベース化する事で、インターネット時代に必ずビジネスになると考えていました。」
また、このようなデータベース化の取り組みは、「税務通信データベース」として実を結んだ。その後「経営財務データベース」などの新たなコンテンツの投入、サービスの多様化の構想が新たに進められた。
従来のデータベースの仕組みでは、コンテンツの二重管理によるシステムの維持管理コストの増大、検索機能の充実やデザイン性の向上など、顧客価値創出のための更なる新サービス・機能追加の要望に対してスピーディに対応できない、といった問題が懸念された。
「このままでは、順調に伸びているネット事業のさらなる拡大や会員の満足度を向上させることができない。今後ますます会員のニーズが多様化するであろう、それに対し迅速に対応していくには、データベース周りの仕組みを再度整理し、構築する必要があると感じたのです。」(税務研究会 会員企画部主任 大野 雅美 氏)
税務研究会では、このような問題を解決するため、コンテンツデータベースを統合化した新システムの導入に踏み切った。
システムの概要
データベースの統合を中心とした、システム再構築の相談を受けた株式会社ソフィア(以下ソフィア)では、「拡張性とメンテナンス性の高いシンプルなシステム」という方針を策定、税務研究会に提案を行った。
「お話をいただいた段階から、既存システムのデータがXMLベースのSGML形式で作成・保存されていたため、新システムのデータもXML形式で管理するのがベストだと考えました。SGMLからXMLであれば、移行も簡単にできるからです。機能拡張に迅速に対応するためには、拡張性とメンテナンス性が重要であるというコンセプトのもと、データベースもXMLデータベースを前提に検討を進めました。」(株式会社ソフィア 代表取締役社長 廣田 拓也 氏)
そして、このプロジェクトのシステム再構築を担当した株式会社ウエルストーン(以下ウエルストーン)は、エディタで作成された原稿(XMLデータ)をアップロードしデータベースに格納する機能と、会員サイトからの検索要求に対してXMLデータベース内のデータを検索し、結果を会員サイト側にHTMLで返すWebサービス・アプリケーションで構成される新システムを提案した。
このシステムは、スタイルシート(XSLT)を変更するだけで、同じデータでも全く違ったデザインの表示ができ、顧客の嗜好に合わせてデザイン性や訴求力を高めるための工夫が簡単に行える機能を搭載している。また、コンテンツ検索機能については、XMLの属性検索と全文検索を組み合わせることで、異なる情報カテゴリのデータ間の串刺し検索など、利便性を向上するしくみを実装した。
「今回の再構築では、不定形のコンテンツを取り扱い、かつ情報の柔軟性・拡張性・検索性を引き出す必要があり、格納されるXMLの標準化の策定も重要なファクターと考え、システム構築とは別に専任チームを編成。標準化に取組みました。」(ウエルストーン 取締役 永井 敏雄 氏)
これらのXMLデータを格納するためのデータベースの選定は、XMLデータベース3製品とリレーショナルデータベース(RDB)製品の中で行われた。「まず、リレーショナルデータベースは、印刷会社や出版物によりバラバラの文書構造を統合的に扱うには不向きであるため、今回のシステムでは、要件を満たさないと判断しました。XMLデータベースの中では、コストパフォーマンスにも優れた『NeoCore』の評価が高かったですね。」(廣田 氏)
導入効果と今後の展開
新システム導入の効果について、担当者は次のように語る。
「システム稼動後は、XMLデータベース絡みのトラブルも殆どなく、維持管理のコスト削減は期待通りです。また、データベースを含むシステム全体がシンプルになり、新しいサービスや新機能の追加時も、システム改修やデータの移行を手間を掛けずに行えるようになりました。それに伴い、『税務通信データベース』と『経営財務データベース』を併用したデータベースサービスなどの情報提供サービスの多角化への迅速な対応も可能となり、新規顧客の獲得、Web利用頻度の増加などの顧客満足度の向上につながってきた事に間違いありません。」(税務研究会 データベース編集部課長 柏木 智子 氏
当初懸念された印刷物の発行部数の減少はなく、インターネットの会員を増やし、売上向上に貢献する結果となった。現在、WEB会員の約7割が、同時に紙媒体の定期購読者になっているという。
情報を手軽に見たい、じっくり読みたいときは紙の情報を活用し、バックナンバーや関連する情報(法令の改訂情報など)を調べる場合は、インターネットの検索機能をフル活用する、という紙とネットの特長を生かした情報収集スタイルが確立されているという。
「年度の改訂の手間を減らし、過去の改正された情報を載せるのであれば、フォローのしかたも考えなければならないので、版管理の履歴がわかるような仕組みにしたいと思っています。税制改正との整合性が簡単に取れるなどの仕組みを構築し、読者の方へ、より分かりやすく、正確なデータを届けたいと考えています。」(税務研究会 取締役 編集制作担当 白井 一男 氏)
また、制作編集部が行っているタグ付の作業の軽減や作業効率の向上という課題がまだ残っているが、今後必ず解決できるよう継続して開発を行っている。現在データ化されているのは2冊の雑誌のみだが、今後は他の書物や、媒体にも展開したいと進めている。
税務研究会の顧客満足度を追求する熱い思いと、現在のシステムに満足しない姿勢に今後も期待したい。
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