株式会社タウンニュース社様
無料の地域情報紙「タウンニュース」を発行し、展開しているタウンニュース社は、多くの出版社や新聞社が課題としている、「記事コンテンツのデジタルメディアへの戦略的活用」と「入稿から印刷まで現場が使いやすい製作環境の実現」を、XMLデータベース、Microsoft Word 、InDesignServe、MovableTypeを利用したシステムを構築する事で実現した。
地域情報紙の記事コンテンツ・データベース
株式会社タウンニュース社
XMLによる記事コンテンツのワンソース・マルチユース展開と、編集記者からの入稿及び製作業務の効率化を同時に実現
背景
株式会社タウンニュース社(以下タウンニュース社)は、「タウンニュース」という購読料のかからない地域情報紙を、神奈川県内全域と東京都町田市に約221万部発行している。
「タウンニュース」は、手軽さと適度な読後の充実感を両立したタブロイドサイズの地域情報紙で、1行政区に1紙を基本として発行しているため、マスメディアには取り上げられない身近な地域情報を提供できる事が最大の特長で、毎週または隔週折込で各家庭に無料で配布されている。
この定期的な新聞折込による配布方法は、同日にしかも確実に読者に届く上、発行エリア内のほとんどの地域をムラなくカバーすることができるため、ポスティングや店頭置き、駅置きと比較して、読者の定着率が高いのも特長のひとつである。
タウンニュース社内では、来るべきデジタルメディアの時代に備え、記事コンテンツを紙媒体だけでなく、Webサイトやモバイルサイト、さらには、スマートフォンや電子ブックのような様々なデバイスに展開する必要性を認識しており、経営課題として検討を行っていた。
そのため、記事コンテンツの戦略活用については、紙面データをWebサイトとモバイルサイトに展開するところから検討がスタートしたが、この検討を行う過程で、解決しなければいけない課題がいくつか見えてきた。
コンテンツを多メディアに展開するには、システムによる仕組み作りが必要である事は理解していたが、具体的な進め方や実現方法が分からず、情報収集をしても本当の意味で当社の目的に合ったシステムの全体像は見えてこなかった。
さらに、記事コンテンツの管理をシステム化するためには、原稿入稿からDTP製作までの一連の工程を統合する事が必須であり、編集や製作といった現場の業務フロー変更も同時並行で進めなければいけない事が判明したのであった。
タウンニュース社では、記事入稿と記事を管理するシステムが運用されていた。この旧システムが抱えていた問題点について、タウンニュース社の製作システム第一部部長 名田氏は次のように語った。
「旧システムは、Webブラウザを入力インタフェースにしていたため、新聞特有の『縦書き入力』には対応していませんでした。編集記者は記事を入稿する際に、MSWordを使って行数を確認しながら記事を執筆し、旧システムのテキスト入力フィールドにデータをコピー&ペーストするという余計な手間をかけていたのです。しかも、写真や図版は入稿できず、データベース(FileMaker)で管理することもできませんでした。」
当然、記事コンテンツを紙面の体裁にレイアウトする、InDesignでの組版工程も効率化は必要だった。旧システムは、記事の入稿・管理以外に、記事コンテンツを使用してInDesignドキュメントを自動生成する機能を実装していたが、写真や図版の抜けた不完全なドキュメントのため、手作業で写真を配置する必要があったうえに、レイアウトも編集記者が作成したレイアウトイメージをもとに手直ししなければならないレベルで、修正の手間がここでも発生していた。
「タウンニュース社のWebサイト製作現場では、記事コンテンツをWebに流用しようとしても、データベースに格納されたデータの最新版管理ができていなかったため、結局、Webデザイナーが校了した紙面データからテキストや写真・図版を取り出し、Webコンテンツ作成ソフトで製作していました。そのため、編集記者や製作現場だけではなく、Web製作現場からも、もっと効率的な仕組みの導入要望が挙がっていました。私は旧システムの構築にも携わり、システムの問題点や課題についてある程度把握していましたので、コンテンツの多メディア展開の話を聞いた時には、システムの刷新と業務フローの見直しを一体となって進めないと成功しないと感じました。」(名田氏)
タウンニュース社には、情報システム部門はないため、このような現場の要望はすぐに経営陣の耳に入り、「あるべき姿」の実現に向けたシステム化を検討するためのプロジェクトが始まるのに時間はかからなかった。
導入の経緯
記事コンテンツの多メディア展開と製作業務の効率化を具体化するための社内プロジェクトが本格的に始動。
「当時、旧システムを構築したベンダも含めて色々なベンダ企業に相談を依頼しましたが、その中でサイバーテックが提案したXML形式でコンテンツを一元管理した自動組版システムの事例を聞いて、これだ!と感じました。早速その中核となるXMLデータベースである『NeoCore』の評価版を請求して使ってみることにしたのです。」(名田氏)
「NeoCore」は、XMLデータをそのまま格納できるデータベースで、カタログや情報誌、マニュアル等のドキュメントデータの管理に向いている点や、自動組版システムで導入を検討していた、アドビシステムズ社のInDesignServerとの連携実績があり製品間の親和性が高い点、そしてXMLという汎用的なデータフォーマットであるが故に様々なメディアに変換しやすい点が魅力的であった。
「NeoCore」の評価は約1か月行い、簡単なサンプルプログラムを作成してデータベースにXML形式のコンテンツを登録、検索するための基本的な動作を確認した。
「評価を終えた時点で、コンテンツはXML形式で、XMLデータベースに格納する方針が固まりました。本番システムを構築する際は、専門のベンダ企業に依頼するつもりでしたから、評価段階ではアプリケーションの基本動作を理解し、現場レベルで運用できる使い勝手の良さを確認できました。週平均200ページに及ぶ膨大なデータは、データベースでの管理が必須でしたが、『NeoCore』のスペックは全く問題ないと判断しました。ただ、データを入稿するためのユーザインタフェースのツール選定や、同時並行でリニューアルを計画していたWebサイトとモバイルサイトとのデータ連携方法については、様々な選択肢があり一番悩んだ部分です。」(名田氏)
システムの概要
記事入稿のインタフェースでは、MSWordを使ったインタフェース案と、ブラウザとFlashを使った案のうち、記事コンテンツの定型化が難しく、ある程度入稿者が自由に記事を書く事が出来る点と、縦書きレイアウトの使い勝手の良さという2点で、MS Wordを入稿インタフェースに採用。
MS Wordを使って記事を入稿することで、決められたルールに従えば、縦書きやルビ、注釈といった記事入稿に必要な要素を簡単に追加し、さらには図版や写真もレイアウトする事が出来る。
入稿者は記事の出来上がりイメージを見ながら作業を進める事が出来るため、今まで行っていた二度手間の作業を全て省く事が可能となった。入稿者はXMLを意識する事なく、全ての記事データはXML形式でXMLデータベース「NeoCore」に格納される仕組みだ。
「NeoCore」には、記事単位のコンテンツデータだけではなく、写真など実データの保存場所やトリミングの座標情報などのメタデータも含め、あらゆるデータが蓄積されるが、このような様々な形式のデータを格納しなければいけないのに、データベースの設計が不要だった事は、特筆すべき点であり、まさにXMLデータベースのスキーマレスが本領を発揮したと言える。
「NeoCore」に格納された各記事コンテンツは、入稿と同時に実行されるInDesign Serverの自動組版で、InDesignドキュメントとPDFに展開される。InDesignのドキュメントは、クライアントのInDesignで製作担当者が自由に修正可能。ドキュメントに加えた修正もデータベースに書き戻され、常に最新版に保たれる。編集記者がPDFを確認してOKを出せば、あとは全体的な紙面のレイアウトに貼り付けて紙面を完成させるだけだ。
本システムのもう1つの目的である記事コンテンツの多メディア展開については、どのような方法で実現したか、藤本氏に聞いた。
「記事入稿、自動組版システムと同時並行でWebサイトのコンテンツ管理システムの構築も行いました。『MovableType』というCMSを利用していますが、今回『NeoCore』とCMSとの間でコンテンツの自動連携を実現する事ができました。具体的には、CMS側からバッチプログラムを起動して、『NeoCore』内のコンテンツデータを自動的にCMSのデータベースに取り込みます。システム間のデータ連携部分も非常にスムーズに行う事ができました。」
「NeoCore」の開発中には、XMLの構造変更がたびたび発生したが、「NeoCore」へのデータ投入及びデータ取得には全く影響がなかったという。このようなデータをRDBで格納していたら、変更のたびにアプリケーション側のデータアクセス方法を細かく修正する必要が生じ、開発期間やコストがさらに膨らんだのではないかと指摘する。「NeoCore」の柔軟性・拡張性が際立った点と言えよう。
導入効果と今後の展開
新システム導入の効果について、タウンニュース社の藤本氏は次のように語る。
「『NeoCore』の良さを最大限に引き出した今回のシステムに関して、現場スタッフの評判は上々です。特に入稿システムは、機能が豊富で使いこなしていない点があるが、新システムに慣れて利用率が上がれば業務効率化は、格段に進むものと思われます。今後は、記事コンテンツの流用が容易になったことで、記事のデータベース化と同時に、スマートフォンなどの新しいデバイス向けに情報発信を行う計画です。入稿システムも今後は紙面製作の台割機能まで機能拡張する事で、入稿から紙面製作まで全ての工程をシステム化できるようにしたいですね。」
タウンニュース社は、この記事コンテンツ・データベースにより、地域メディアとしての情報発信力を更に強化し、デジタル時代の先頭を走るメディアとして更なる成長を遂げるに違いない。
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