XML教材コンテンツ・データベース
株式会社Z会
マニュアル作成支援システム「PMX」で教材コンテンツのワンソース・マルチユース展開と制作フロー改善による業務効率化を実現
背景
通信教育サービスを展開する株式会社Z会(以下、同社)では、紙による通信教育の他に、映像授業やタブレットを用いたデジタル教材による通信教育サービスを本格展開し、新しい学びのスタイルを提供している。
特に、あらかじめ設定されたカリキュラムや問題に決められた順番で取り組むのではなく、1人ひとりの理解度に応じて最適化された問題・解説に取り組む「アダプティブ・ラーニング」においては、「Z会Asteria」を業界に先駆けて展開している。内容理解・問題演習・添削指導、すべてがタブレット内で完結する、学習サービスである。
課題
同社では、新しい学びのスタイルに対応した学習教材を早く・最適な形で提供するにあたり、従来の紙面を制作するフローの限界を感じていた。
MS-WordやInDesign等のDTPツールでページ毎に作成された紙の教材コンテンツはデジタル教材への再利用性が低いため、一から作り直しが必要であった。この時点で、コンテンツの一元管理により紙とデジタルの再利用を前提とした教材コンテンツ・データベースを構築・自社で保有するという選択肢は、同社にとって自然な流れであった。
しかし同社は、各教材の編集・制作部署がそれぞれ制作を発注していたため、デジタルコンテンツのデータベース化を推進するには、各部署の意見を集約し、最適なデータ形式とコンテンツ運用フローを設計する部署を横断するような組織が必要であった。
同社の経営戦略部コンテンツ統括担当の大谷氏は当時の事を以下のように振り返る。
「英語や数学といった『教科』に最適なレイアウトが存在し、必要な要素も教科で異なってきます。しかし、どの教科であっても重要な箇所、注目する点は必ず存在します。それらは一目で理解でき、どの教科であっても同じ体裁の方が、お客様にとって学習しやすい教材となるはずです。
この教材を制作するためには、教科横断でレイアウトを確認し、共通化できる要素と教科に特化した要素を仕分けていき、全教科担当者と一つひとつ確認しながら、コンテンツの構造化を進めていきました。全教科の特性を把握し、各担当者に構造化のメリットをイチから説明していくのは、かなり時間がかかる作業でした。特に、新しいレイアウトと構造化により、教科担当者が実現をめざす複雑なレイアウトの教材を、なるべくシンプルにしつつ、学習効果の高いものになるよう調整することには、特に気を遣いました。」
同社では、教材コンテンツ・データベースを構築するにあたり、社内で検討を重ね、その結果、以下の要件を満たすシステムの選定を開始した。
同社は、世界標準規格であるXMLを採用したコンテンツ管理パッケージに関する情報を収集する過程で、社内の別部署の担当者から、サイバーテックの紹介を受けた。
サイバーテックは、XMLデータベース「NeoCore」の製品ベンダーであると同時に、製造業でのマニュアル制作業務や、出版社に導入実績があるコンテンツ管理パッケージ「PMX」を既に開発・販売しており、「PMX」が、同社が探しているソリューションの要件にほぼ適応する事を伝えた。紹介を受けてから約1か月後には、「PMX」を中心としたデジタル教材のコンテンツ管理の仕組みの提案とデモンストレーションを実施した。
当時の様子を大谷氏は以下のように振り返る。
「XMLデータベースからの教材制作については、過去にうまく運用できなかった経験があります。XMLデータベースから出力する際のテンプレートが固定され、新しいテンプレートの修正や追加にも多額の費用を要しました。また、紙組版に特化したソリューションは数多く存在しますが、HTML出力も同時にできる製品は『PMX』だけでした。また、図版(イラスト・写真等)の管理と教材のデジタルコンテンツ化の2点が同時に実現できる仕組みも検討していたところ、この課題を解決するという点においても『NeoCore』と『PMX』の利用が、探していたソリューションの最適解でした。
『PMX』は、操作性や構造がシンプルで柔軟に対応可能なサポート体制も好評価でした。さらに、汎用性・拡張性がある形式、かつ今後のコンテンツ制作の効率化にもつながると考えて検討していたXMLでの制作フローにも適したものであったことと、当時の弊社のシステムとの相性も良かったこともあり、導入を決断いたしました。」
その後、同社はサイバーテックの「PMX」とXMLデータベース「NeoCore」を核とする「教材コンテンツ・データベース」の構築に着手した。
構築に際しては、パッケージの基本機能をできる限りそのまま使用する事を重視したため、導入にかかった期間はわずか3か月足らずであった。また、インフラについては、サイバーテックから、「PMX」をクラウドサービス(AMAZON AWS)上のプライベートクラウド環境で動作させる付加提案を採用した。
同社は、クラウドサービスの利用により、構築期間の大幅な短縮化、同社の厳しいセキュリティポリシーへの準拠、さらにはオンプレミスと比べてインフラ費用の削減を実現した。
また、サイバーテックのコンサルティングサービスを利用することで、教材コンテンツの構造化・管理属性のカスタム要件定義・図版データの管理方法・出力スタイルシートの改修ポイント・社内への操作教育などの作業について、実機を用いながら効率良く進める事ができた。
導入の効果
「PMX」内で一元管理された教材コンテンツの一部は、「Z会Asteria」というサービスに使用されている。つまり、XMLデータベースから出力されたデジタルコンテンツが、タブレットを使った新しい教育サービスに使用されたのだ。
本サービスの制作にあたり、「PMX」を使用して実際に編集を行っている大橋氏は、以下のように語った。
「『PMX』の運用フローや登録時に必要な情報等をコンテンツ原稿制作者と共有するようにしています。原稿を制作する際、コンテンツID、コンテンツの問題の正誤情報、書式、画像サイズ、および出力時のテンプレート等といった簡単な情報を予め制作者側で原稿内に記載することで『PMX』への登録作業を効率化しています。
まだ操作に慣れていない制作者に対しては、入力担当者を設けて、原稿制作と入力作業を別にすることにより作業効率も向上をしていますが、近い将来、制作者が原稿を校閲・校正しながら『PMX』へ登録できるよう、都度運用フローを見直しています。」
同社は、「Z会Asteria」以外にも、大学受験講座の教材コンテンツの一部を「PMX」でデータベース化した。
サイバーテックがフィリピン・セブ島に有するオフショア拠点で行うITアウトソーシングにより、同社から預かった数十万点のInDesign/PDFのテキストファイルを、XHTMLデータに変換、「PMX」への登録代行までを約1年かけて実施した。
「データ量が大量であるが故に、データ移行作業は海外にアウトソースという選択肢が最も費用対効果が高いと考えていた」(大谷氏)の言葉通り、国内企業では実現できない費用で、しかも全て日本語であるコンテンツの移行プロジェクトを成功させた。
今後の展開
「PMX」の今後の展開について、大谷氏は次のように語った。
「教材以外の社内コンテンツへの活用を考えています。例えば入会案内や講座案内カタログなどは、自動組版と連携することで、入稿から版下作成まで全て「PMX」で完結する事ができるはずです。紙とWebへ同時展開できるコンテンツは社内にたくさんあるため、有効活用していきたいと考えています。」
先進的な取り組みで、教材のデジタルコンテンツ管理のトップを走り続けるZ会。今後も様々な取り組みに期待したい。
「PMX」を使った教材制作フロー
「Asteria」の商標は、アステリア株式会社のライセンスにもとづき使用されています。
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