顧客へのシステム提案時に必ず触れなければいけない「費用対効果」。XMLでコンテンツを一元管理し、カタログやWeb等に展開するシステムの費用対効果とは一体どのようなものなのでしょうか。実際に私が行った過去の提案を基に考察したいと思います。
マニュアルの仕様
製品マニュアルの制作フローは非常に複雑かつ制作に多くの方が関わります。
原稿作成(20名) | 設計担当者がWord等で設計書等を基に執筆 製品に精通したライターが設計書等の技術文書から執筆 |
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図版制作(3名) | スペック表、構成図などマニュアルに必要な図版やイラストをデザイナーが制作、図面をそのまま利用する場合も多い |
ページデザイン(2名) | 原稿と図版の配置をページ単位にレイアウト。DTPデザイナーが制作 |
編集、校正(3名) | 表現や記述方法、文書構造がばらばらの原稿と図版を編集担当者が適切な形に編集、リライトする。通常初校~最終校まで数回に渡り制作者と編集者の間で繰り返される |
翻訳(10名) | 海外への輸出や外国人向けのメンテナンスマニュアルの場合、翻訳者が翻訳を行う。製品によっては20ケ国語以上もの言語に翻訳される |
進行管理(1名) | 制作スケジュールに従い原稿の提出や校正の進行状況を管理 |
組版(1名) | 校正や編集中工程もしくは原稿校了工程で、印刷を行うための版(データ)を作成する。デジタルデータでの入稿が当たり前になりソフトウェアを使った自動組版が一般的 |
印刷/製本 | 印刷物として印刷する |
Webディレクション(1名) | Webに公開する情報しない情報、検索条件等の印刷物制作とは異なる視点でコンテンツ全体を設計 |
Webデザイン(1名) | Webディレクターに従いページのデザインを作成 |
Webコンテンツ制作(5名) | 紙のマニュアル制作フローとは別にWeb担当者が「原稿」を基にWeb公開用のコンテンツを作成。印刷物のプロセスと同様に校正-再編集を繰り返す。最近はCMSを導入し効率化が図られている。 |
製造業の場合、上記のようなマニュアルの制作は自社の制作子会社や部門が行うケースが多いようです。製品の技術的な特長をかなり詳しく知識として保有していないと制作業務そのものができないのです。
前置きが長くなりましたが、上記の制作業務を全て人手で行っている機械メーカー企業A社様から頂いたシステム提案のリクエストは以下のような内容です。
上記をシステム化するための費用(概算レベル)を仮に5000万円としましょう。システム化による効果は、制作業務の自動化による制作人員の削減、制作期間の短縮などの「コスト削減」と「人力によるミスの低減」です。さて、肝心の「費用対効果」はどうでしょうか?
○ 削減できるコスト
△ 削減できないもの
× 増加するコストや作業
これは本当に顧客にとって良い提案でしょうか?計算上システム化における費用対効果を出す事はいくらでも可能です。しかし、それが本当に顧客が求めるものなのか、その効果が出るまでにどれくらいの追加投資が必要なのか、逆にデメリットは何か、までを提示する必要があります。
上記のような多額のシステム化費用と時間を必要とする提案依頼に対して、私は次のような意見を持っています。
全ての業務課題に対する提案は行いますが、具体的なシステム化提案と費用対効果の提示については、「経営課題、業務課題の重要度と緊急度」「費用対効果が最も顕著に現れる業務」の2点を顧客から引き出し、段階的・局所的に進める方法をとる事が多いです。
顧客側の優先度と緊急度の高い一部業務であれば、説得力が増し、提案自体も現実身を帯びてくるのです。
制作支援システムの費用対効果は、コスト削減だけでしょうか?私は提案を行うときに、コスト削減ではない他の要素に注目します。
「コスト削減」は現場のマネージャにとっては重要ですが、経営層には「企業価値向上」「売上拡大」も非常に重要であり、現場の担当者にとっては「本業への集中」や「残業時間の削減」「モチベーションUP」は非常に重要な要素となるのです。
今回は製品マニュアルをテーマに「費用対効果」に関する考察をしました。この分野の業務には必ず「ノウハウを持ったスペシャリスト」が存在し、制作フローの中で非常に重要な役割をはたしています。私は、「システム化=スペシャリストの業務代行が可能となる」とは考えていません。逆にいくらシステム化してもスペシャリストの存在は必要で、削減されるべきものではないと考えています。同じように「カタログ制作」にも「製品を魅力的に見せるスペシャリスト」が存在します。コンテンツやドキュメントなど情報系システムの構築やデータベース化の提案時は、このようなスペシャリストの存在を常に頭に入れ、削減すべき業務とそうでない業務をきっちり分類したうえで提案に挑む事が重要ではないかと考えます。
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