前回のコラムで、MS-Wordなどのビジネス帳票の再利用について書きましたが、今回は、保険会社が発行する約款や医薬品に添付される添付文書、有価証券報告書、財務諸表報告書など、「約款類」の分野のドキュメントをテーマに取り上げ、法律による改訂箇所の履歴管理や新旧対象内容の管理などを必要とされるこれらのドキュメントはどのように管理されるべきなのかを紐解いていきます。
生命保険や自動車保険を契約する際に、契約者が確認しなければいけない文書が約款です。
保険の種類が多様化し、さらには電話やインターネットを利用した手続きが一般的になったため、約款の作成業務自体もスピード化・効率化が求められました。約款は文章と表を中心としたドキュメントで、その文書構造は保険商品毎に若干の違いはあれど、ほぼ同じような文書構造を持っています。
さらに、約款の文書構造の特長として、共通部分と個別分が存在します。共通部分に変更が入った場合には、全ての商品の約款に反映させなければいけないため、二重入力や二重チェックの手間をできるだけ削減する事が必要でした。
このような理由から、保険約款の制作と管理をシステム化する流れは急速に広まったのです。
市販の薬を購入すると必ず付いてくる、小さく折りたたまれた紙があります。
その医薬品添付文書と呼ばれる紙には、用法や用量、使用上の注意、副作用に関する情報等重要な情報が書かれています。この添付文書は内容に間違いがあってはなりません。また、法改正による内容の改定のたびに、その箇所を修正又は追加しなければいけません。
薬品の種類により構造のバリエーションや図表の量に違いはあるものの、保険約款同様、文書構造がきっちり決まっており、共通部分と個別分がある事や、履歴管理の必要性や、それに伴う新旧対象表が必要なところも保険約款と非常に似ています。
制作効率を上げ、さらに改版時のミスをなくすために、これらの構造化文書は、どのような形式で保存したら良いのでしょうか。
ワープロやDTPソフトは使いなれている人にとっては、作成編集が容易だというメリットがあります。
しかし一方で、ソフトウェアによって機能が異なるため、制作の自由度が高い反面、文書構造が作成者毎にばらばらになってしまう恐れがあります。ある人は見出しを図形オブジェクトとして作成し、別の制作者はテキストに装飾を付けて見出しを表現する事が起こります。個人で使用する文書ならよいのですが、関係機関への提出義務がある重要な文書ですからきっちりと構造を定義して文書化する必要があります。
また、文書量が増加し一度に複数の文書を編集、構成する過程でコンピュータでの自動化を行う時にも、ソフトウェアに依存する形式で保存された文書は、コンピュータの自動処理に向いているとは言えません。
XML形式で保存する事で、上記のデメリットを解消します。XMLはテキストであると共に構造を定義する事ができます。また、コンピュータが認識しやすく、プログラムによる自動処理に向いている保存形式であると言えます。
一方、デメリットは、XMLの知識がない作成担当者にとって、最初からXMLエディタを使って作成する事は非常に敷居が高いと言う事です。XMLを利用したこれら文書の作成・編集システムでは、入力や編集のインタフェースにMS-WordやXMLの知識がなくても入力できる専用のエディタを使って入力する方式を取るものが多く存在します。見た目にはワープロライクな画面で入力をしながらも、裏でシステムが自動的にXML形式で保存するのです。
システム化をするうえで、この入力編集のための使いやすいインタフェースを提供する事は非常に重要であると言えます。同時に、共通部分と個別部分を管理し、共通部分を修正すると他の文書の共通部分を自動艇に更新する機能や、自動的に新旧対象表を出力する機能、さらには改版履歴を保存し、必要な時に旧版の文書を呼び出して流用する機能を備えたシステムが求められます。
しかし、これらのシステムは利用者である企業の様々な部門の要求に細かく対応させる必要があるため、比較的高価なシステムになっており、今後はこういったシステムの維持コストの削減や、プログラム改修コスト削減を可能にする、システムの共同利用化などの新たなしくみが求められる事でしょう。
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