営業・企画職のためのXMLレシピ 第18回:XMLで費用対効果の高いシステムを提案するには

XML/XML DBのサイバーテック:連載コラム/営業・企画職のためのXMLレシピ

2012年4月26日
セールス・マーケティング部 部長 小野 雅史

自分で書くのもおかしな話ですが、テクノロジーのひとつである「XML」を営業や企画の方が果たしてどこまで理解する必要があるのでしょう。XMLの仕様を理解する必要があるのか、XMLだけでなく関連規格であるHTMLやEPUBなどについて広く浅く知ることが重要なのか、規格よりも使い方や用途を理解する事が大事なのか、さらにはXMLを制作編集するプロセスやツールを理解する必要はあるのか等々、悩ましいところです。さらに業界によってXMLとの関わり方も千差万別ですから、必ずしも我々IT業界のアプローチが皆様のお役に立つわけでもないと考えています。

そこで今回は、2つの利用シーンを元に営業や企画の方にとって最も重要な「費用対効果」という観点でXMLの導入の是非について考えてみたいと思います。

お題

以下の2つのシーンのうち、XML化が必要なのはどちらでしょうか?また必要と思われる場合、XMLの利点である「コンテンツの再利用」と「自動化・省力化による制作効率の向上」というメリットが生かされるためにはどの程度の投資コストが妥当なのか、を考えてみましょう。

シーン1

「ある新製品の情報をメルマガとWebサイトコンテンツとチラシを作成し50人の顧客に知らせる」

素材 新製品情報(紙又はテキストデータ)5個
道具 テキストエディタ、メーラー、HTMLエディタ、DTPソフト
手順
  • 製品担当者→新製品情報をテキストエディタで作成
  • 情報担当者は、製品担当者から受け取ったテキストをコピペして以下のアウトプット用のファイルを作成、配信・配送の手続きをする
    →メール用の付加情報を加えレイアウトを整える
    →Web用にHTMLタグを付加しHTMLを作成する
    →DTPソフトでチラシ用のレイアウトに変更しPDF化する

【解説】

確かに情報コンテンツを効率良く扱う点や、複数のメディアに展開するワンソース・マルチユースを目的としている点から見ると、コンテンツをXMLするという目的には合っています。しかし、「コンテンツのボリュームが少ない」「コンテンツを利用する顧客数が少ない」「コンテンツの制作に関わる人が少ない」という点から考えた時にわざわざXMLで管理する必要があるのかは疑問です。このケース、費用対効果の観点からみて投資できる費用はせいぜい数万円~数十万円でしょう。

シーン2

「10の事業部門で扱う新製品の情報を、メルマガとWebサイトコンテンツと冊子を作成して2,000人の顧客に毎週お知らせする」

素材 新製品情報(紙又はテキストデータ)50個
道具 テキストエディタ、メール配信ツール、CMS/DTPソフト
手順
  • 各製品担当者→新製品情報をテキストエディタで作成
  • 情報担当者は、製品担当者から受け取ったテキストをコピペして以下のアウトプット用のファイルを作成、配信・配送の手続きをする
  • 制作担当者は、元データをコピペして以下のアウトプット用のファイルを作成する
    →メール用の付加情報を加えレイアウトを整え、お知らせする顧客リストと合わせてメール配信ツールで配信するための準備をする
    →製品個別のWebレイアウトを作成し、そこにCMSツールを使ってデータを流し込む
    →DTPソフトで冊子に必要な装丁やページ情報、レイアウトをデザインして印刷会社に渡すための版下としてのpdfを出力する
  • 情報担当者は、制作されたアウトプットを確認し、正しく2,000人の顧客に届いたか確認する。

【解説】

シーン2の場合、シーン1と用途や目的は変わりありませんが、コンテンツ量、利用者数、制作に関わる人数が圧倒的に多い事が判ります。このように「削減が期待できる制作管理コスト」「売上拡大や囲い込みしたい顧客数」が多ければ多い程XMLを用いたシステムを構築する際の費用対効果が高まります。費用対効果の観点からすると、システム化による制作効率向上は、Web/DTPの制作担当者の作業(外注コスト含む)の大部分と各事業部門の製品担当者のデータ作成作業がシステムにより自動化されると考えた場合、年間で数百万円のシステム投資が可能ではないかと考えます。

コンテンツや文書をXML化すること自体は非常に簡単です。元となる素材(テキスト)があれば、エディタを使ってタグを指定するだけでXML文書が出来上がります。しかし、XML化する本来の目的である「文書の再利用」と「コンピュータでの自動化」を考えた場合、実は表には見えない様々な作業が存在するのも事実です。営業や企画職の方は常に「費用対効果」や「期待できる売上効果」をベースにしてXMLの活用の是非を判断して頂きたいと思います。

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