前回のコラムで、文書毎の特長を7種類に整理しました。その結果、その種類毎に構造化するメリットや構造化の難易度の違いがある事がわかり、さらに、XML化する目的も、制作効率だけでなく、データの2次利用や情報共有など多様なニーズが存在する事も判りました。今回は、「MS-Word/Excelなどのビジネス帳票」について、XMLの使いどころを紐といていきたいと思います。
MS-Word/Excelなどのビジネスアプリケーションで作成される文書を「ビジネス帳票」とここでは呼ぶことにします。契約書や議事録や報告書、業務マニュアルやビジネスレターなどを指し、オフィス内のプリンタで印刷し、メールに添付する事でビジネス活動でのコミュニケーションのツールとして、また個々の業務ノウハウの共有や証跡を保管する目的で作成されます。お客様からのお問い合わせで「ビジネス文書をデータベース化して一元管理し、会社や組織内の情報共有を図りたい」という声をよく頂きますが、私はまず、以下のポイントを確認するようにしています。
ポイント1/共有と検索が主目的であれば、文書自体の構造化は不要
文書そのものを共有し、組織内で検索する事を主目的とするのであれば、ファイルサーバに文書を集めて、検索エンジンで文書のメタデータと中身を検索するしくみがあれば、目的は達成されます。
社内のポータルサイトの再構築や分散する文書管理システムの情報統合の初期段階として、文書そのものではなく、検索するためのインデックスやメタ情報を統合する方法が最も近道です。その上で、検索の精度を高めたい、メタ情報を他のシステムで再利用したいと言った別のニーズが出た場合に初めて、文書リポジトリやメタ情報を別のデータベースに移す事を検討するのが現実的ではないでしょうか。
ポイント2/ビジネス帳票は非定型。構造化の「労力」は再利用で報われる
ポイント1で触れたとおり、ビジネス帳票の活用段階で、共有と検索以外の「再利用」の必要性が出た場合に初めて「文書自体の構造化」を検討すべきです。しかし、この文書の構造化には、非常に労力がかかります。
サイバーテックのXMLの事例でも一般のビジネス文書を構造化した事例は非常に少なく(特定の業務における構造化事例は沢山あります)、その理由として最も多いのが「文書をXMLに構造化するまでの時間と労力は、そのメリットと比較して余りにも大きすぎるから」というものなのです。
ポイント3/現場を文書作成ルールで縛る事は至難の業
一言で言うと、一般的なビジネス帳票は、「非定型文書」です。MS-WordやExcelは、非常に強力な文書作成機能を持ち、さらには個人レベルで作成した関数やマクロを組み込み、個人レベルでの文書作成の効率化を図る事ができます。
しかし一方で、これらの文書は「組織や会社のもの」であることも事実です。内部統制の流れ以降、管理側の要望である、文書のフォーマット化、作成中、作成後の文書の管理場所と保存方法のルール化、ワークフロー化も近年進んでいます。
上記の再利用のニーズだけでなくこのような内部統制や管理効率化のニーズは、現場で培われてきた「文書作成の自由度や工夫」と相反するため、現場と管理双方で十分に方向性のすり合わせを行って頂く必要があると考えます。
ポイント4/一元管理する文書は多い程メリットが大きい
文書の一元管理について、いつも最後に伺う事は「結局どれくらいの数の文書を管理したいのですか?」数千程の文書であれば、一元管理しなくても探すことができる、私はそう考えます。数万程の文書であれば、文書管理ソフトで十分に管理できる。私はそう考えます。
結局、ビジネス帳票であるWordやExcelを一元管理するメリットは、「大量の文書をコンピュータで自動的に処理し、作成した元文書と異なる形式に変換し、別部門で再利用する事で、業務の効率化や文書そのものの信頼性を高める事」であると考えます。
最後に、少しシステムのお話をします。
最新版のMS-WordやExcelの中身は、XMLでできている事をご存知ですか?MS-Word2007/Excel2007の拡張子である「.docx」や「.xlsx」の最後の"x"は、XMLの"x"です。拡張子の「.docx」を「.zip」に変更し、zipツールで解凍してみて下さい。Office Open XML Formatで整形されたXMLドキュメントと関連するメタ情報、包含するオブジェクトデータがフォルダ毎に整然と収まっています。
つまり、コンピュータのプログラムを使えば、この文書ファイルを自動的に別の形式に変換する事ができるのです。Word2007で作った文書をExcel2007に変換してしまうことだってできるのです。
2年前に開催したイベント「NeoCoreサミット2008」で、マイクロソフトの方に登壇頂き、次のようなコメントも頂いています。
従来の「文書管理」の概念をそのまま持ってきても、OpenXMLの本当の価値は見いだせないのです。是非、お客様と一緒に新しいビジネス文書のあり方を議論してみたいと思っています。
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