営業・企画職のためのXMLレシピ 第7回:教材・専門書のコンテンツ管理にはXMLが最適

XML/XML DBのサイバーテック:連載コラム/営業・企画職のためのXMLレシピ

2011年5月11日
クロスメディア開発部 部長 小野 雅史

学校で使われる教科書や参考書、塾のテキストや「六法全書」などの法律書、医師や看護師向けの医学書、税務金融関係の解説書までをまとめて「教材、専門書」と呼ぶことにします。

これらは、教育機関や専門家のアドバイスを元に作成され、専門知識を持った編集者とそのノウハウを理解した制作者が制作にあたります。知識レベルや学習段階に応じた分冊化や電子書籍化へのニーズが高い分野です。一言で言うとこの分野は、DTPファイルで管理するよりも、コンテンツを構造化し、校了コンテンツをXML化して管理するメリットが非常に大きい分野なのです。

電子化が進む教材コンテンツ

学習教材とは、教科書だけでなく学習塾が発行するテキスト教材や副教材、教材を元に作成される先生向けの指導書全般を指します。小説や漫画の様な一般書籍と異なり、教材は、一般の書籍流通ルートとは異なる方法で学校や学習塾、企業内に配布されます。当然発行部数自体も少ないため、印刷や制作にかかるコストは一般書籍ほどかける事はできません。

学習塾が生徒に対して発行するテキストやドリルは、「学年別」「レベル別」「夏期講習・冬期講習別」「指導者用」など様々なバリエーションが存在します。元の教材が一つでも1年間で1学年当たり十数冊もの分冊を発行する企業もあります。さらに、インターネットやWebを利用したEラーニングや、ネット販売の仕組みを利用した「電子版教材」の販売を考えると、1年間に出版する数は、1学年当たり数十冊に上ると言われています。

出版する企業にとっては、顧客のニーズにきめ細かく対応するための必然的な流れでもあり、絶好のビジネスチャンスでもあります。このようなXMLによるワンソースマルチユースをキーとしたコンテンツのXML化に本格的に取り組んでいる企業も少なくない。

教科書バリアフリー法と拡大教科書への対応

「拡大教科書」「教科書バリアフリー法」という言葉をご存じですか?

現在、日本では、30万人以上の視覚障害を持つ方がいます。「教科書バリアフリー法(通称)」は、弱視や視覚障害を持つ児童に対して、教育を受ける権利を保障するために、教科書を発行元に対して、拡大教科書発行の努力義務や電子的な記録方法の提供を義務付けた法律で、2008年に成立しました。「拡大教科書」は、このような児童向けに文字を大きくしたり太くしたり、図版やイラストを見やすくした教科書の事を指します。

これら拡大教科書は、従来ボランティアの方の手作りで発行されていたため、必要な児童に対して供給が間に合わないと言う課題がありましたが、昨年、小中学校に関してはほぼすべての教科書が拡大教科書に対応したようです。しかし、まだ高校も含め、全ての教科書が対応したわけではなく、それを制作する制作会社も、コストや納期など様々な制約の中で作成したという事で、まだ制作効率の面で課題を抱えていると言えます。

しかし、元のコンテンツをエディタを使ってXML化し、スタイルシートと自動組版ソフトという既存の技術の組み合わせにより、印刷会社に渡すPDFデータを自動的に生成する事が可能であり、一部の研究グループによりそのような取組が進められているのも事実です。参考までに、私が参加している、JAGAT(日本印刷技術協会)のXMLパブリッシング準研究会の有志が作成した、フリーのエディタと自動組版ツールを紹介しますので、興味のある方は是非お試しいただく事をお勧めします。

http://sites.google.com/site/fantastikk2010/
・XML入力編集ツール/「Jepasspo」
・XML自動組版ツール/「FANTaStIKK」

医学向け専門書籍や販売員向けのセールスの手引き書

医師や看護師向けの医学書、税務金融関係の解説書、さらには保険会社の外交員など向けの教材や専門書籍など、比較的「小ロットの出版物」の制作の効率化に、XMLは有効です。この分野は、Eラーニング用の教材として流用される可能性が非常に高いため、元データが一元管理されている事、紙だけでなくWebコンテンツとしての流用を前提に制作する事が、制作上のポイントとなります。

まとめ

教科書や教材、専門書のコンテンツは、InDesignなどのDTPデータで管理されている事が多く、まだ「紙への出力だけ」が前提となっている点や、「一回作成したら使い捨て。似たようなものを作成する場合も最初から」という発想で作られています。

これは、一概に制作やデータ管理、印刷を行う側だけの問題ではなく、出版を企画する際に、電子化や分冊化も含めた二次利用を前提としたコンテンツ管理方法を検討頂く事が重要であると考えます。以下に、コンテンツ管理の面からみた、DTPデータの課題とXMLで管理するメリットをまとめたので参考にして頂ければ幸いです。

DTP形式のファイルで管理する際の問題点
  • コンテンツを部分的に二次利用する際に制作効率が悪い。(二重入力・二重チェックは発生)
  • 最新のコンテンツが制作会社や印刷会社に分散してしまい、多人数での分業、同時作業の効率が悪い。
  • 結果として、版元(出版社や学習塾など)は分冊化・電子化された教材をタイムリーに提供できない。
XMLでコンテンツを管理するメリット
  • 教科書や教材は、書誌情報、目次、素材文、問題、解答、図版、脚注、参考文献などといった基本的な文書構造を持つため、XMLと親和性が高い。
  • その構造は、教材や書籍によって幾つかのバリエーションを持つため、派生する出版物の種類の数だけ構造が変化する。
  • Web(HTML)やスマートホン(HTML5)向けの変換や、電子ブック(EPUB)や拡大教科書(PDF)への変換が完全自動化できる

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