営業・企画職のためのXMLレシピ 第6回:チラシ・カタログ制作におけるXML化のメリット・デメリット

XML/XML DBのサイバーテック:連載コラム/営業・企画職のためのXMLレシピ

2011年4月14日
クロスメディア開発部 部長 小野 雅史

カタログやチラシ、フライヤー、ポップなど、商品やサービスの販促物の制作は、一般的にAdobe InDesignやQuark ExpressなどのDTPソフトで作成される事が多く、色彩の再現性や訴求力を重視したデザイン性が重視されます。ではその制作工程の効率化や制作後のコンテンツの再利用という観点で見た時、XMLでデータ管理するメリットやデメリットを整理してみたいと思います。

カタログの元データは誰のもの?

カタログは基本的に「非定形ドキュメント」です。顧客から制作側へは、制作の効率性や再利用性ではなく、「商品の魅力を伝えるためのデザインや色の再現性」や、「商品を魅力的に演出し、売れるための制作技術、印刷技術」が求められます。これだけを見ると「構造化された文書を効率良く管理する」「データを他メディアに再利用しやすい」といったXMLのメリットは、重要ではないように思われます。カタログ作成に関しては、次にあげるポイントが顧客側のニーズとして重要視される場合、XMLによるデータ管理が有効だとお考え下さい。

  • 小組み(印刷用語:本文に入れる表など、ページの一部に本文とは異なる体裁で組んで入れるものの事)が大量にある。
  • カタログそのもののページ数が多い。(1冊あたり数百ページ以上)
  • 制作は内製化され、コンテンツそのものを社内で保有している。

小組みが多く、ページ数が多い、という要件は「文書をコンピュータプログラムで繰り返し大量処理しやすい」、というXMLの特性そのものでもあります。この点は、紙のカタログそのものを見ればすぐに判断できる事です。数十ページモノで年数回発行されるカタログは、敢えてXMLでコンテンツを管理するメリットはないという事です。

XMLによるデータ管理が有効かどうか、もっとも重要で判断が難しいポイントは、実は3番目の「制作は内製化されコンテンツを社内で保有しているか」なのです。印刷会社の営業の方から「お客様のカタログをWeb化する上で、ワンソースマルチユースをメリットとして打ち出した提案をしたい」と相談を受ける事が良くありますが、お客様のコンテンツの保有状況や管理の実態についての情報が入手できず、提案に必要な費用対効果を出す事ができない場合が非常に多いのです。

クライアント企業が、紙カタログ製作をコンテンツデータ丸ごと外注化されている場合、ワークフローや制作上の課題は全てブラックボックス化され、誰も実体を把握できないからです。クライアント企業が印刷会社や制作会社と協業関係を結び、コンテンツの戦略的活用を進めている場合を除き、クライアント企業がコンテンツそのものを外部の企業に預けているメリットは全くない、と断言します。XML化のメリット以前に、コンテンツの自社保有に対する重要性をクライアント企業様には認識して頂きたいと思います。

チラシ、フライヤー、ポップは共同利用型のサービスへ

これらの販促物も基本的に「非定型」です。カタログの様なページものでもなく、1枚もので完結します。企業や店舗がシステムを使ってこれらの販促物を大量生産できたとしても、魅力のないチラシになってしまったら、それは本末転倒です。そしてXMLでコンテンツを管理するメリットは、カタログと同様、「ある程度パターン化されたものを大量に処理する」という要件が必要となります。

ところがチラシのような販促物は、一度作成したものを二次利用するような使い方はしないのが一般的です。さらに、最近は「必要なものを必要なだけ少ロットで作成、印刷する」オンデマンド印刷が主流であり、XMLやコンピュタを使ったデータの大量処理の必要性が少なくなっているのも事実です。企業内でDTPを行い、印刷に必要なデジタルデータを社内制作し、価格の安い「印刷通販サービス」を利用するスタイルが一般的になったのは、この様な背景があるからです。もはや企業が販促物の制作を一企業(印刷会社)に対して発注する時代は終わったと言えるでしょう。

販促物の制作や印刷、さらには配送までのサービスは、今後印刷会社、制作会社の枠を超えて、共同利用できるSaaS型のサービスに移行すると考えられます。既にアメリカで日本でも名刺やビジネスカードの分野では、SaaS型のサービスが登場しており、利用する企業はWeb上でレイアウトを選択、データを入力し、発注から決済までを完結する事ができるようになりました。もはやこのようなビジネスモデルなくしては、販促物の制作に関わる企業が、顧客のニーズに応える事ができないでしょう。

このように、一口に「販促物」と言ってもシステム化やデータ管理のアプローチは様々です。今こそ、本当に顧客にとって最適な解決方法は何か?という事を業界の枠を超えて考え実現し、ノウハウを共有する必要があるのではないかと考えます。

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